ひとり相撲

僕が興味を持った有る事無い事を、書いたり書かなかったり

ズートピア小噺

ブログを勢い余って立ち上げたものの、普通に生活していたら中々書きたいと思う出来事も無く、ぼんやりと口を開けて落ちてきた埃を食べて生活していたら映画を観ようと誘われ、慌てて埃を吐き出して一週間ぶりの風呂に入り二週間ぶりに埃以外のものを口にしてTOHOシネマに三週間ぶりの外出をした。簡単に言うと「ズートピア」を観てきたので感想とか書きたい!!二週間ぶりのお通じです。

 

ウサギの警察官ジュディとキツネの詐欺師ニックが肉食動物と草食動物が共存する大都会「ズートピア」で起きている怪奇事件の解決に奔走する。というのがざっくりとしたあらすじ。所謂バディ刑事物で警察官と詐欺師という組み合わせ、また現実では捕食者と被捕食者という関係性であるはずのものがコンビを組む事でギャップが生まれて面白くなっている。例えばホラー作品の小説版リングや羊たちの沈黙ビデオゲームならバイオハザード0など、善人と悪党のバディというのはやはりバディ物の定番と言って良いでしょう。タダのバディ物に止まらず、人種差別や社会欺瞞などちょっと触れづらい所にも焦点を当てており、意外と考えさせる内容になっていたと思います。

 

個人的な感想はまず「ズートピア」というタイトルが気になりました。誰がどう考えても動物園の「zoo」と理想郷の「utopia」を掛け合わせた造語なのだけれども、そもそも動物園と理想郷はかけ離れたもので、餓えることなく渇くこともなく安全な寝床がある事は理想的かもしれないけれども、どちらかと言えば人間に管理されたディストピアであるのは明らかで、ユートピアではないはず。やたらと監視カメラが多かったから案外ズートピアはガチガチの管理社会なのかもしれません。実は「zoo」と「dystopia」を掛け合わせた造語なのかもしれませんね。そもそも劇映画だし観客は人間なので、動物園という体裁は整っているという事でしょうか。タダの難癖付けみたいになってしまいました。勿論これは屁理屈です。監視カメラで思い出したのですがカワウソを探すシーンもちょっと引っかかって、詐欺師のニックは悪党の勘で人目に付かないルートを思いつきカワウソの乗ってる車を見つけ出すという所なのですが、前振りで監視カメラが無いルートを使ううんぬん言ってたのに最終的にはがっつりカメラに映ってるって、悪党もちょっと迂闊過ぎませんかね。そうでもしなきゃ話が進まないのは分かってるんですが、もう少し動物らしい特性を使って追跡するとかして欲しかったなと思います。

 

動物らしいと言えば動物らしい特性が活きたキャラって免許センターのナマケモノとシンリンオオカミ位じゃないですかね、キツネが狡賢いってのは人間が付けたイメージだし、ウサギのジャンプ力もそこまで活かさなかったし、そう考えたらウサギじゃなくて舘ひろしが主演やったら案外普通にあぶない刑事になってたかもしれませんね。駐車違反を取り締まる舘ひろし、そこまであぶなくない刑事ですね。ただもう少し動物らしさがあっても面白いのではと感じました。設定として理性を得て獣性を捨てたというものだからある意味正しいのかもしれませんが。イメージとはいえ動物らしいキャラ付けされたニックはいい味を出していたのは間違いありません、最初こそひねくれ者でしたがジュディに徐々に心を開いていく様はむず痒くなりながらも気持ちの良いものです。反対にジュディはイマイチキャラが立っていないという印象です。割とありふれたタイプの正義感の強い王道主人公なので、もう少しウサギらしさがあっても良かったと思います。ウサギの特徴って何だと聞かれたら少し困りますが、最初に怖いと鼻がヒクヒク動く癖があると言われていたのに子供時代よりよっぽど怖い目に遭いながらも鼻は動かない。農場出身で植物に詳しいみたいな感じなのに地元民が知っている「夜の遠吠え」という呼び方を知らない。ジャンプ力が活きたのは序盤の訓練シーン位だし。キャラクターデザインは凄く可愛らしいし、好きなんですけどね。

 

気に食わないついでにもう一つ言えば黒幕もちょっとふわってしていると思います。恐怖で支配するって肉食動物排斥したら恐怖もクソもないんじゃないですかね。別に野生化した動物操ってるわけじゃないし。しかも草食動物って圧倒的マジョリティーなんだから数で言ったら草食動物の方が質悪い、ゾウやらサイやら大型が山ほどいるし、警察所長ですらバッファローなんだし、普通に選挙しても勝ったんじゃない?って思います。そうなったらそうなったでまた人種差別問題になってしまうのかもしれませんが。肉食動物を完全に弾圧して草食動物だけの世界を作り、その頂点に立って独裁政権を敷いて、恐怖政治を行うって意味だったんですかね。それならもう少し肉食動物にヘイトが集まっていく所をがっつり見たかったかなって思います。ただ黒幕との対決シーンは面白い仕上がりです。緊迫感もあり、ニックが詐欺師らしく手癖の悪い立ち回りをしたのはかっこよかった。すり替えておいたのさ!

 

なんだか屁理屈ばっかになっていますが、これでも結構楽しんだんですよ。興味深いシーンもいくつか在って。例えば序盤にニックが言った「人生はミュージカルみたいに上手くいくもんじゃない」みたいなこと言うんですがこれってディズニー作品すべて否定してる訳じゃないですか、幼少期のジュディに対しても「大それた夢は持たずに百姓として堅実に生きなさい」みたいな事言ってるし。ディズニーらしくない子供たちの夢を真っ向から壊しにいってるのは少し新鮮でしたね。「シュガーラッシュ」でも「悪役は悪役らしく、ヒーローを目指さない事」的な事言ってるし、近年はシビアなモノの見方をする風潮なんでしょうか、だけど最終的にはちゃんとディズニーマジックがかかるのがディズニーの愛しく素敵な所なんだと思います。後はトイレから脱出するシーンはスプラッシュマウンテンのオマージュだと感じたり、海賊版DVDのパッケージがピクサーのパロディだったり、にやっと出来る場面もあったりで良かったですね。

 

ただ一番最後のシーンも個人的には微妙で、バディに恋愛感情を抱いたらそれはもう相棒という関係性じゃなくなってしまうのでは無いでしょうか。それまでに至るシーンにも特別恋愛に発展するような感じでも無いし、吊り橋効果とかくそしょうもない理由だったら寒いですが。実際「好きだろ」って言葉しか言ってないから友愛か愛情かは図りかねるのですが、個人的にはバディである以上恋愛を無理に絡める必要はなかったと思います。やっつけみたいだし、ちょっとチープにも感じますね。ジュディとニックの絡みでもう一つ言うなら解散してから再結成するシーンでのレコーダーでのやりとり、まあ普通に考えたら意趣返しでしてやったりって所なんですが、私は時間の都合上吹き替えでみたのですが録音されていた言葉が「私は間抜けなウサギよ」だったと思うのですが、なんかもう少しはっきりと弱みを握れそうな言葉にして欲しかったかなと、前置きとしてまだ明確な事実が無い内にあれやこれやと喋ってしまって社会を混乱させた挙句大切な相棒も傷つけてしまうなんてって言葉が入るんですが、ただ間抜けなウサギって部分だけ録音してもちょっとパンチにかける感じがしてなんとも。想像しろよって話なんだろうけどもう少し気の利いたセリフがあったんじゃないかなとも思います。字幕だとまた違うセリフ回しなんですかね、少し気になるところです。

 

あれやこれやと書きましたがなんだかんだ楽しい映画でした。テンポも良いし、テーマも割としっかりしててちょっと考えさせるし、ちゃんとハッピーエンド、見ていてストレスも無く、すっと消化できる、良く言えば楽しめる娯楽作品、悪く言えば毒にも薬にもならないと言うべきか。設定的にも続編作りやすそうだし2とか案外でるかもしれませんね。ニックかジュディどっちか捕まって助けに行くとか、晴れて二人とも警察になったんだからZDPの日常を描いてもいいし、作中では言葉でしか出てこなかったサハラスクエアとかいう砂漠地帯でなんか事件起きたとか、ズートピアに巨大ゴキブリが侵攻してきて、ZPDのメンバーは対抗するため昆虫のDNAを移植して戦うとか、コンテンツ的には続けようと思えばどうとでもなる感じですよね、観客動員結構凄いっぽいですし。


生来穿ったモノの見方ばかりしてしまう性分で、ひねくれた事ばっかり言ってしまってますが、本当に普通に楽しめました。ただシュガーラッシュの監督が関わってると聞いて期待値を上げすぎてしまったのだと今では思います。肩肘張らずに素直に真っ直ぐ観て楽しむべき作品で、幅広い世代で楽しめる映画だと思います。1回観ただけなので私自体の主張自体もかなり荒く、また文章力の無さも悔しい、もっと上手く伝えられる様励まなくてはと感じた、そんな次第であります。